お安い値段で帆立の旨味を味わえ、しかも美味しい出汁が取れる!!
そんな食材が「帆立の稚貝(ちがい)」です。
しかし、正体不明の白いウネウネしたものが気持ち悪い、ということで嫌厭している方も多いのではないでしょうか?
そこでこの白いウネウネの正体を明らかにしていきます。
また、ウネウネの下処理方法や、その他の付着生物、寄生虫なども併せてご紹介していきます。
この記事は人によっては不快に感じる画像が含まれます。
帆立稚貝(ベビーホタテ)の情報 6/8頁
[6頁] 稚貝の付着物の正体を検証!
[8頁] 帆立稚貝の長期での保存法(coming soon)
6頁目の概要
- 稚貝に付着する謎の物体の正体を暴く!
帆立稚貝に付くウネウネの正体
帆立稚貝に付着する謎の物体
様々な紋様を描きウネっている白い物体。
なんとなく、毛虫やぎょう虫、ムカデのようなものを連想させる「人間が本能的に嫌悪するような姿」のこの付着物が、帆立稚貝を敬遠される方の一番の理由でしょう。
Point!
- 成貝としての帆立貝は出荷段階で除去される場合がほとんど。
- 稚貝の場合はコスト面からそのまま出荷される事が多いです。
それでは、白いウネウネした部分をよく観察してみましょう。
女性をはじめ、多くの方が生理的に無理となるようなヴィジュアル…。(;^△^)
ウムム…
私が帆立の稚貝をよく購入するスーパーでは、売れ残って半額になっていることが多いのも事実。
Point!
- こんな安くて美味しい食材が割引され更に安くなっていたら「間違いなく買い」です!
…貝だけにw
チラリと見える生物らしき影
この白いウネウネした物体が何だか分からないけど、某かの生物であろうということは、みなさんもご想像に難くないでしょう。
そこで上の画像をよくご覧になってみて下さい。白いウネウネの空き間から赤茶っぽい謎の物体がチラリと見えています。
そう!これがウネウネの中に潜む生物の一端なのです!
それではこの白いウネウネに潜む謎の生物を取り出してみましょう。(。-ω-)ノ
ウネウネに潜む生物がコレだ!
さて、中身の生物を取り出してみました。(;^△^)
ワオ!
これが白いウネウネの正体です。
白い外郭から覗く先端を持ってズルっと引き出すと、ミミズのようなニョロっとした生き物が出てきます。
Point!
- 除去方法もご紹介しますので安心してご購入下さい。
その正体はカサネカンザシ
これは環形動物の多毛類に分類される「カサネカンザシ」という生物です。
釣りをする方にはお馴染みの釣り餌であるゴカイも多毛類なので、カサネカンザシはゴカイの仲間ということになります。
また、このカサネカンザシは帆立稚貝以外にも、牡蠣やテトラポッドなどの人工物にも付着しています。そう言われれば、岸壁で見たことあるわ、という方もいるでしょう。
カサネカンザシの生態
棲管から取り出したカサネカンザシの本体をよく見てみると・・・
な、なんと正体はあの
寄生獣のミギー!?
・・・というわけではありませんw
ミギーの目玉に見えたのは、鰓蓋(さいがい)という器官です。
そして鰓蓋の根本の赤いビロっとした部分が鰓冠(さいかん)と言い、海水を濾過してプランクトンを摂取したり、呼吸をする器官です。
また、外郭となる白いウネウネしたものは石灰質でできた管です。管棲多毛類であるカサネカンザシは、自ら作ったその棲管(せいかん)の中に棲んでいます。
この棲管の中に身を隠した時に、入り口を閉じる役目を果たすのが、先ほどのミギーの目玉的な鰓蓋です。
侵略的外来種
カサネカンザシは、元から日本近海にいた在来種ではなく、船舶のバラスト水などでオーストラリアから移入してきたと考えられている外来種です。生息域は北海道以南の太平洋側を中心に九州沿岸、奄美大島などになります。 結果、漁業をはじめとした水産業や、臨海発電所などにも被害をもたらす厄介な存在となっています。
ウネウネを除去する下処理方法
料理の見栄えが良くなる
さて、このカサネカンザシですが、帆立稚貝の味噌汁など殻ごと使う料理の場合には、その茹で汁にカサネカンザシの出し汁(?)も含まれるということになってしまいますね。(^∇^;)
オヨヨ
また、料理のビジュアル的な面においても、あまり気持ちが良いものではありません。そこで、それらの問題をサクッと解決する2つの方法をご紹介します。
その1「削り取る」
ということで、私が推奨する下処理方法は、カッターなどで削り取ってしまうという方法。とっても簡単です。
※刃物の扱いには十分に気を付けてください。
Point!
- 産地の方などは気にせずにそのまま使っています。
- 私自身も、そのまま使うことがあります。
- 特に健康被害に遭ったことなどはありません。
< 注意点 > 変なものを食べてアレルギーが出る人もいることを踏まえると、アレルギー体質の方などは除去して使った方が安全面で確実と言えるかもしれません。※飽くまでも素人の個人的見解です。 |
その2「剥き身にする」
帆立の稚貝はサイズが小さいので、調理する個数が多くなると思います。つまり、カサネカンザシを削り落とす作業は、けっこうな労力になります(||゚Д゚)
コンナニタクサン!?
また、「そもそも触りたくない」という方もいるでしょう。
そんな方におすすめするのが、剥き身にしてしまってから加熱する方法です。
これなら茹で汁にカサネカンザシのエキスが出ることもありませんし、削り落とすより剥き身にする作業の方が手間としては楽です。
Point!
- 剥き身にする際に、多少は触れることになりますが、軍手などをして我慢して下さい。
帆立稚貝に付く生物や寄生虫
付着物を知って安心を得る
さて、帆立の稚貝に付着している白いウネウネしたものの正体は「カサネカンザシ」という多毛類の生物でしたが、自然の恵みである帆立稚貝には、まだ色々な種類の付着物があります。
ここではその正体を解説していきますので、帆立稚貝を食す際に少しでも安心して食べて頂ければと思います。(*u_u*)
ペコリ
とぐろを巻くウズマキゴカイ
まずはこちらの上の画像、とぐろを巻いた渦巻き状の生物です。
その渦巻き状の部分を削り取りました。
この「とぐろ」を巻いているものは、管棲多毛類であるウズマキゴカイの外郭であると思われます。
Point!
- 帆立稚貝に付着しているものとしてポピュラーなのが、カサネカンザシとウズマキゴカイです。
ウズマキゴカイの本体
こちらが外郭から取り出したウズマキゴカイの本体です。
カサネカンザシと同じ管棲多毛類であり、同じくカンザシゴカイ科に属するので本体は酷似しています。
管棲多毛類の見分け
ウズマキゴカイとして紹介した上の画像ですが、たまたまカサネカンザシが渦を巻いたのではないかという点に関しては、正直言って分かりません。しかし、いずれにしろ帆立稚貝に付着している白い物体は管棲多毛類であるということです。
可愛い寄生虫ホタテエラカザリ
次にご紹介するのは、帆立稚貝の殻に付着している生物ではなく、稚貝の身に寄生している寄生虫です。
上の画像は一見すると普通に帆立稚貝の中身ですよね。ウロや貝ヒモ、貝柱にオレンジ色の器官という風に捉えることもできると思います。
しかし実は、このオレンジ色の部位は帆立の器官ではありません。
ホタテエラカザリという寄生虫です!Σ( ̄ロ ̄lll)
エッ!?
帆立のエラの部分に寄生しており、帆立の器官の一部にも思えますが、そうではなく寄生虫です。
私個人の感触としては、帆立稚貝の1パックの中で30%~70%ほど、このホタテエラカザリが寄生している感じです。
Point!
- 食べても人体に害は無いので、見落としてしも大丈夫です。※(1)
- 発見したらピッと取り除いておくと良いでしょう。
可愛い名前の意味
「ホタテエラカザリ」という可愛らしい和名が付いていますが、その意味は名が示す通りです。
ホタテエラカザリ
「帆立のエラを飾っている」という意味
また、学名は「Pectenophilus ornatus(ペクテノフィルス・オルナッス)」と言います。
Pectenophilus ornatus
「帆立を愛する鮮やかな体色のもの」という意味
このホタテエラカザリの成体は、5葉に分かれた袋状のものからなっており、帆立のエラに寄生して帆立の血液を吸って生きています。
ホタテエラカザリの生態
ちなみに付着している個体は全て雌です。雄はどこにいるのかと言うと、雌の体内に潜んでいます。現時点の研究では、雄が何を摂取して生きているのか不明なようです。大変興味深いですよね。
海草のような甲殻類ワレカラ
再び帆立稚貝の殻に付着してるものに戻ります。
上の画像のような海草や藻屑みたいなゴミみたいなものも、帆立稚貝に付着しているのをよく見かけます。しかし、これは海草などの植物ではありません。
れっきとした甲殻類です。∑(゚Д゚)
ナ、ナニ~!?
稚貝の殻から外してみました。やはり、海草などの藻屑にも見えますよね。(。´・ω・)
ン~?
では、分かりやすい部分を見てみましょう。(解像度が低いですが…汗)
上の画像の丸で囲った部分が、昆虫のカマキリのカマみたいになっていますよね。これはこの甲殻類の第二胸脚(咬脚)になります。
それでも「信じられないわ~、ただのゴミでしょ?」・・・と思われる方は下の画像をご覧下さい。(-ω☆)
キラーン
完全体のワレカラを乾燥
いかがでしょう?
これで、ゴミではなく生物であるということを信じて頂けたかと思います。
こちらの個体は、また別の機会に購入した稚貝に付いていたもので、見た目で完全体(?)に近い状態でしたので、分かりやすくなるように乾燥させてみました。
なんか干し海老みたい・・・。(¯﹃¯*)
美味しそう!・・・と思ったあなたは、私と同じ食いしん坊ですね(笑。ご安心下さい。次のページで色々な付着生物と共にワレカラも試食してみました。
生きている状態のワレカラ
さて、こちらはWikiからお借りしたワレカラの画像です。パッと見では、もはや海草です。このようにワレカラとは海草などに姿が似ている甲殻類なのです。
抱卵したワレカラ?
こちらのワレカラの個体は赤い膨らみがあります。おそらく抱卵したワレカラの雌ではないかと思います。
ということで、これらの画像を見て頂ければ、既にお分かり頂けたと思いますが、稚貝に付着していたゴミみたいなものは、植物ではなく動物であり、甲殻類に分類される生物なのです。
ワレカラの卵?
ワレカラの雌は卵胎生で保育嚢を持っています。その保育嚢で子供を孵化させます。上の画像は、正にその保育嚢に卵を抱えた「抱卵」した状態だと思われます。
実は姿が魔界的なフジツボ
帆立の稚貝に付着しているもので、管棲多毛類の他によく見かけるものとして「フジツボ」が挙げられます。
海辺の岩礁やテトラポッドなどにたくさん付着してるのをご覧になったことがある方も多いでしょう。フジツボは貝っぽいですが、先程のワレカラと同じく甲殻類に分類されます。
フジツボの分類
フジツボは、19世紀初頭までは軟体動物門の生物とされていました。軟体動物門には貝類の他にイカやタコなどが含まれます。そして現在、フジツボはエビなどと同じ節足動物門の甲殻亜門(いわゆる甲殻類)に位置づけられています。
上の画像は帆立稚貝に付着していたフジツボで、あまり見かけない大きな個体のもの。この大きさのフジツボが付着していることは、なかなか少ないと思います。( ̄□ ̄;)
コ,コレハ!?
Point!
- 近年ではフジツボは高級食材や珍味として出荷されています。
- 市場に流通しているものは大型になるミネフジツボです。
真上から見た様子。クチバシみたいなものが「蓋板(がいばん)」と呼ばれるもの。なんか小鳥が中から覗いているみたいです。
そう思うと、蟲師に出てきた「ヤドカリドリ」(C)漆原友紀/講談社に通じる可愛さがありますね♪( ⑉¯ ꇴ ¯⑉ )
オホゥ
そんな可愛さもあるフジツボですが・・・
魔界から降臨!?
こちらがフジツボの本体!!
そう!
魔界の生物だったのです!ギョエ―――∑(゚◇゚ノ)ノ―――!!
フジツボの紹介動画
これはグリフィスの受肉で、転生の器となった赤子の妖魔? はたまた、ガッツの寝込みを襲った
夢魔(インキュバス)!?(C)三浦建太郎/白泉社
・・・というのは、もちろん嘘ですが、魔界の生物みたないな独特のフォルムですよね( ̄□ ̄;)
妖魔的な触手?
触手のようなものは「蔓脚(まんきゃく)」と言い、その名の通り「蔓(つる)のような脚」をしています。この蔓脚で海中の植物プランクトンを取り込み餌としています。
幽霊に似ているユウレイボヤ
続いてはこちら。デロデロした透明感のある物体が帆立稚貝に付いていました。これもまた一見すると海草の類のように見えます。
おそらくですが、これはユウレイボヤではないかと思われます。透明の物体にはうっすらと器官のようなものも見えます。
ユウレイボヤとは、いわゆるあの海のパイナップルとも言われる「海鞘(ホヤ)」の仲間で、夜間にぼんやりと光る姿が幽霊のようだということで、このような名前が付いています。
実体を伴い害をなす幽霊
帆立の養殖においては、このユウレイボヤが大量に帆立に付着すると、その成長を阻害するとして問題にもなっています。
ミニチュアサイズの可愛いホヤ
いつもの様に買ってきた帆立稚貝の下処理していると、見慣れた姿が目に入りました。(。´・ω・)
オヤ?ホヤ?
そう、ユウレイボヤに続いては、普通のホヤです。
私はホヤが大好きで、ホヤの時期になると購入して捌いて食べているので、その姿は見慣れているのですが、このホヤには目を見張りました!!
なんとミニチュアサイズの極小ホヤ!
なにこれ~?めちゃめちゃ可愛い!!(。◕ ∀ ◕。)
オホゥ!
という事で、この極小ホヤも次の頁で食べてみましたので、ご興味ありましたらご覧下さい。
稚貝より小さい赤ちゃん稚貝
小ちゃくて可愛い、と言えば、こちらも可愛くないですか~?
( ⑉¯ ꇴ ¯⑉ )
そもそも稚貝は幼い小さい貝ですが、それよりも更に小さい貝が付着しています。これは足糸(そくし)で付着している付着期の帆立稚貝かと思われます。
こちらも2種類の二枚貝が付着しています。黒い方がムラサキイガイ(ムール貝)で、白い方はおそらくキヌマトイガイです。この2つの稚貝も足糸で帆立稚貝に付着しています。
Point!
- 「足糸」とは、二枚貝類が足と呼ばれる器官で合成し分泌する糸で、これで岩などに体を固定します。分かりやすい例がムール貝の根っこみたいなもの。あれも足糸です。
世界初の海中接着剤とイガイ
ムラサキイガイなどのイガイ類の足糸の接着力は非常に強力で、アメリカ海軍なども研究に関わっているほど各界から注目されています。その接着力は、一般的な接着剤では使用できないようなポリプロピレンさえ接着可能、しかも水中でです。そんなイガイの接着タンパク質の構造をベースとした接着剤が北海道大学によって開発されました。しかも世界初の海中で繰り返し使用できる接着剤。生物の力って凄いなと実感させられる出来事ですね。
個虫が群体をつくるコケムシ
次にご紹介するのはこちら。これまた海草かなんかに見えますが、おそらくコケムシの一種ではないかと思います。
専門家ではありませんので断定することはできませんが、ちょっと硬めの質感と表面はザラザラつぶつぶ感がありました。
謎の物体として時折り話題となる「オオマリコケムシ」も、コケムシの一種として知られています。
コケムシとは?
群体生物である外肛動物で、小さな個体がたくさん集まって一つの大きな個体状になっている生物です。群体となっている表面にはたくさんの小さな穴があり、その一つ一つに小さな個虫がいます。上の稚貝に付いていた物体も、表面にツブツブ感があったので、コケムシの一種ではないかと思います。
稚貝に付着した謎のUFO?
毎年、大量の稚貝を購入して食べていますが、今回の付着物は初めて見ました。
何と謎のUFOが稚貝に付着!?
Σ(゚□゚ノ)ノ
まあ、正確には飛行物体ではないので、未確認海中物体、UUO(Unidentified Underwater Object)って感じでしょうか。
(;^△^)
取り外してみました。乳白色に近い透明でほぼ円形です。
そして中には何某かの生命体が存在しているようです!
ま、まさか、中にはエイリアンが!!?
((( ;゚Д゚)))
その正体は?・・・不明?
もちろん中にエイリアンはいませんでしたw
外套膜と中腸線っぽいものを観察することができます。殻の構造も2枚が重なっていました。何らかの二枚貝の幼生、幼貝です。
殻の縁が波打っており体の見た目も帆立感もありますが、このサイズならとっくに上で紹介したようなミニサイズの帆立の姿になっていると思うので、帆立ではないと思われます。
色々調べてみましたが、残念ながら種の同定はできませんでした。
(´•ω•̥`) ワカランチン…
Point!
- もし、上の画像から種の同定ができる方がいましたら、是非Twitter等でご教授下さい!併せて根拠となる事項も提示して頂けると大変助かります。
まとめ
稚貝付着物は自然の恵みの証し
帆立稚貝には、白いウネウネしたカサネカンザシやウズマキゴカイ、その他にもコケムシやワレカラ、フジツボに二枚貝などなど、色々と付着しています。
しかし、それは帆立稚貝が自然の恵みである証しと言うことがきます。
例えば、昔ならキャベツなどの葉物野菜に青虫が付いているのなんか当たり前でした(まあ、最近はもう見ないですね)。私と同年代以上の方なら、あ~そう考えれば、そういうもんかあ、と思えるのではないでしょうか。
ということで、毛嫌いせずに是非ともご家庭の食卓で帆立稚貝を使ってみてください。
そして私個人としては、カサネカンザシがびっしりと付いていても、それを除去するコストを省いている分だけ安く購入できるならば、カサネカンザシ付きで販売してもらう方が良いなあと思います。(*´∀`*)
まとめのPoint!
- 帆立稚貝に付着する白いウネウネはカサネカンザシ。
- 付着したまま使用しても問題無し。
- 除去して使えば更に何の問題も無し!