【目次】わらびの情報
[3頁] わらびの旬や栄養・中毒や発がん性物質について
【わらびの基本情報】 3/5頁
旬や栄養、発がん性物質・中毒に関して
春の山菜、ほろ苦さが美味しい「わらび」。1、2ページ目ではアク抜き方法や長期保存の仕方などを解説しました。このページでは、わらびの旬や栄養、産地、そしてわらび中毒や発がん性物質など、わらびの基本情報をお届けしていきます。
わらびの事をもっと知ることで、より美味しくわらびを楽しむことができますよ♪(*≧∀≦*)
[3頁] わらびの旬や栄養・中毒や発がん性物質について
わらびはシダ類の植物で日本全国に見られる、いわゆる山菜の一種です。また、世界各地にも自生しており、塩蔵わらびや乾燥わらびなどの加工されたものが海外からも輸入されています。その中では圧倒的に中国が多く、ロシアからの輸入物もあります。
日本で生のわらびが市場に出回る時期としては、2月に初ものを見掛けたことがあります。旬は4~5月で、大体6月末から7月頭くらいまでは収穫され出荷されます。
平成26年の日本におけるわらびの出荷量は、314.5t、その内の七割以上を占めるのが山形県で出荷量は244.5tとなっています。次ぐ長野県が12.9tなので、その圧倒的なシェアがお分かりになるかと思います。
その他の主な産地は岩手県、秋田県、宮城県など、やはり東北地方が多いようです。また中部地方は長野の他に新潟県など。そして徳島、愛媛など四国も出荷があるようです。
※参考資料:<農林水産省>特用林産物生産統計調査_平成26年特用林産基礎資料
ちなみに上の画像は、私の父の実家となる宮城県の鳴子の山(かつての鳴子町、現在は大崎市)です。子供の頃は、父や祖父について山の中に入り、わらびをはじめ山菜を採取した想い出があります。 当時は当然ながら子供だったので、さほど興味はありませんでしたが、大人になった今となってみると、もっと気合を入れて山菜採りしたかったなあと思いますねえ。
山菜採りと言えば、出荷量が断トツの1位となる山形県では各地にワラビ園がありますので、山菜シーズンに山形に観光に訪れた際には、ワラビ採りを体験してみるのも楽しいと思いますよ。
文部科学省の食品成分データベースによると、わらび100g中の成分は92.7gが水分、タンパク質が2.4g、炭水化物が4g、食物繊維が3.6gとなっています。
目立った栄養素がある訳ではありませんが、カリウムなどのミネラル、そしてビタミンA、ビタミンB群、ビタミンE、ビタミンKなどが含まれます。
しかし、わらびは生で食べることはできません。アク抜きの工程を踏まなければ食べることはできないので、その少ない栄養素も、茹でる過程において水溶性のものは失われてしまいます。
なので栄養を摂るために食べるというよりは、旬を楽しむ、食生活を豊かにするといった意味合いで食べるのが良いと思います。
また、わらびを細かく叩いてみると分かりますが、オクラの様な粘りがあります。これはムチンなどの粘り成分です。特に岩手県西和賀町のわらびは「西わらび」と言い、この粘り成分が多く含まれており人気ですので、機会があれば食べてみて下さい。
あまり栄養価が高くないわらびですが、これが乾燥させたわらびの場合は実は栄養価がグンと跳ね上がります。
100g中の主な栄養素の比較(茹でわらび・乾燥わらび)
※参考資料:<文部科学省>食品成分データベース
上記の数値からも分かる通り、乾燥わらびは栄養豊富なので、たっぷりとわらびを入手した時なんかは、乾燥わらびに挑戦してみるのも良いかもしれませんね。
ちなみに乾燥わらびの作り方はこちらで解説しています。╭(๑•̀ㅂ•́)و
わらびの長期保存・塩蔵・乾燥・瓶詰め
わらびは、ただ何となく食べていると「わらびはわらび」としか思いませんが、改めて見ると、綺麗な緑色のもの、紫っぽいもの、茶色っぽいもの、赤っぽいものなど、それぞれ色が違うものがある事に気付きます。
これらは「青わらび」、「紫わらび」の二系統に大別されています。青わらびは緑系のもので、紫わらびは紫系、茶系のものです。この紫わらびは、地方により赤わらび、黒わらびなどとも呼ばれています。
この色の違いは品種の違いということではなく、土壌や日射量などが関係しているのではないかと言われていますが、ハッキリとした事は分かっていないようです。
実際、全てを正確に区別できる訳ではなく、中間系と言われるものもあり、この中間系を含めると三系統に分ける事ができます。
この色の違いに関して、一説には東北の方では緑系が、関西では紫系が好まれるとも言います。
また、色の違い以外にも太いものや細いものもあります。
私個人としては、5ページ目 でのアク抜き実験の際に色々なわらびを試した結果、紫色の太くてずっしりしたものが美味しいなあと思いました。でももちろん緑系や細めのものも美味しいので、好み次第といったところでしょうか。
ただし、どこの産地とは敢えて言いませんが、色が薄い感じのものは全体的に筋張っていて、いまいちでした(色が関係するかは分かりませんが)。
ちなみに 上の項目 で述べた岩手県の高級な「西わらび」は、紫わらびの系統のものになります。
どうですか?旬のわらびを食べたくなってきましたか?
さて、八百屋さんやスーパーでいざわらびを購入しようと思った際に、どんな点を見れば良いのか。ポイントは3つです。
1.穂先が下を向き、開いていないもの
成長するにつれ、穂先は上を向き開いてくるので、そうなる前のものが美味しいです。
2.産毛がたくさん生えているもの
わらびの表面には産毛が生えています。これが新鮮さの目安にもなります。
3.切り口が変色していないもの
切り口が干からびて変色しているものなんかは、時間が経ってアクも強くなっていると思われます。
その他にも、色々なサイトでは「茎が太く短いもの」を選ぶと書いている事が多いですが、細いものも美味しいですし、細い種類しか売ってないこともあるので、これは前述した通り好み次第ではないかと。 ただ長過ぎるものは成長が進んでいて筋張っている可能性も考えられますので、避けた方が良いかもしれません。
季節の恵みを楽しめる美味しいわらびですが、「わらび中毒」という言葉は皆さんご存知でしょうか?
中毒というと当然ながら怖いイメージが有りますが、一般的には生のわらびを食べてしまった家畜が対象となっています。
このわらびによる家畜の中毒は古来から知られていた事ではあったものの、その原因となる物質は長年の間、不明のままでした。
かつて大正の頃に岩手県の梁川地区で多発した馬の奇病。これは「梁川病」、または「腰フラ病」などと言われ、馬が起立不能などの症状に陥ってしまう病気です。
昭和20年代に行われた実験により、この病気はわらびを食べたことによるビタミンB1欠乏症ということが立証されました。これはわらびに含まれる「チアミナーゼ(アノイリナーゼ)」によって、ビタミンB1が破壊される事から発症します。
また、広く知られているのが牛のわらび中毒です。昭和30年代に山形県で散発した原因不明の牛の出血症は実験により、わらび中毒であると断定されました。
牛のわらび中毒は馬の場合とは原因となる物質が異なり、「プタキロシド(プタキロサイド)」という発がん性物質が原因となっています。急性中毒の場合は粘膜からの出血、血尿、血液凝固不全などの症状が表れ、重篤な場合は数日で死亡してしまいます。
上記の牛馬の家畜の他、めん羊や山羊でも中毒はあるようです。更にモルモットにおいては出血性膀胱炎を起こすことが報告されており、犬猫にも与えてはいけない食べ物とされているので、みなさんが飼っているペットちゃんにわらびを食べさせることは控えましょう。
※画像は本文とは関係ありません。 写真提供:ソザイング
【 参考資料 】
<岩手大学獣医病理学研究室>いわての伝染病・中毒症をひもとく
<岩手大学農学部獣医学科家畜病理学教室>牛ワラビ中毒に関する病理学的研究
< 農業・食品産業技術総合研究機構>ワラビ
<栃木県獣医師会>犬や猫が食べてはいけないもの
さて、こんな恐ろしいわらび中毒ですが、果たして人間への影響はどうなのでしょうか?
アク抜きせずに食べると脚気になる事もあるなどと言われていますが、これは馬がビタミンB1欠乏症になったのと同じ理由からそう言われているのだと思います。
しかし、ご安心下さい。
普通にアク抜きして食べている分にはその心配はありません。
馬のわらび中毒の原因となっている「チアミナーゼ」は、加熱によってその活性を失います。
ただし一説には、アク抜き済みのものでも大量に(トラック1台分)食べると中毒になると言われています。多くのサイトでは Wikipedia から引用したと思われる
「大量出血になり、骨髄が破壊され、死に至る」という内容が記載されていますが、この情報自体の出典元は不明です。牛のわらび中毒から、このような説になっているのかもしれませんし、実際本当にそうなのかもしれません。
この情報の出自がハッキリしない以上、私個人としてはこの件は何とも言えないというスタンスですが、とは言っても、そんなにわらびを食べる人はまずいないでしょうし、実際に人間がわらび中毒になったという報告例は今のところは無いようです。
なので食卓で普通にわらびを食べて、春の旬を楽しむ分には何の問題もないでしょう。
※牛のワラビ中毒の原因であるプタキロシドに関しては 下の項目 にて。
※参考資料<国立健康・栄養研究所情報センター健康食品情報研究室>ビタミンB1解説
わらび中毒に関しては普通にアク抜きして食べていれば問題は無いという事は既に述べた通りですが、、塩蔵わらびを作って保存しておく際に注意すべき点が一点あります。 これは、わらび自体の中毒というわけではないのですが、塩蔵わらびによる「銅中毒」は事例があるようです。
3ページ目で 塩蔵わらびの作り方と戻し方 を解説しておりますが、戻す際に色出しの為に10円硬貨を使っています。
同様の効果を狙って、塩蔵わらびを作る場合に銅線や銅板を一緒に仕込んで、
そのまま保存してしまう方もいるようです。その状態で長期間保存しておいた事で、銅の成分がわらびに吸収されてしまい、銅中毒を発症したようです。ですので銅を使うのは戻す時だけに使うようにしましょう。
わらび中毒の情報に続いては、わらびの発がん性物質の話になります。
実はわらびには発がん性物質も含まれています。それは「プタキロシド(プタキロサイド)」。そう、前項にて牛の中毒の原因として登場した物質です。
牛の急性のわらび中毒に関しては前述した通りですが、慢性のわらび中毒の牛には膀胱の腫瘍が発生することが分かり、この事からわらびの発がん性の研究が行われるようになりました。
そして「国際がん研究機関(IARC)」による「発がん性分類」では、わらびは「グループB」に分類されています。
グループBは、人に対する発がん性の証拠は不十分ではあるが、動物実験においては確かな証拠が有り、人に対する発がん性の可能性もあるとされているグループになります。
そんな発がん性物質があるなんて、怖くてわらびが食べれなくなっちゃいますよね(汗。
でも大丈夫!
きちんとアク抜きをしたわらびを食べれば問題無しです。
わらびをアク抜きする際には熱湯を使いますが、この熱湯によって、特に木灰や炭酸水素ナトリウムを含む熱湯によって、発がん性が消失されることが分かっているのです。
炭酸水素ナトリウムとは、いわゆる重曹です。ですから、昔ながらの木灰を用いる方法、今日の重曹を用いる方法でアク抜きすれば安心ということです。また、熱湯自体にも効果があるようなので、最近流行りの小麦粉と水を使用したアク抜きも効果があると思われます。
更に、塩漬けによっても発がん性が顕著に消失するとの事なので、わらびの塩漬けを作る際にアク抜きせずにそのまま塩漬けする昔ながらの方法も合理的であったという事ですね。
ただし、わらびを食べている牛のミルクから発がん性物質が検出されたようなので、その点は牧場に自生するわらびの徹底除去など、酪農家の方たちに対応して頂く必要があるでしょう。
【 参考資料 】
<農林水産省>国際がん研究機関(IARC)の概要とIARC発がん性分類について
<山田静之・小鹿一・木越英夫・杉浦幸雄>ワラビ発癌物質-化学研究とDNA修飾-
※ 5ページ目 では小麦粉と塩を使ったアク抜きに関して実験検証しており、私個人は現在はこの方法はおすすめしておりません。
わらびの旬や産地、栄養などの基本情報。そして気になるわらび中毒や発がん性物質にして解説してきました。
特に中毒や発がん性物質についての情報は、私自身が研究員でもなんでもないので、
信頼できるであろう情報を探し出し、それをまとめた形になりますが、情報元を見極めて取捨択一しているつもりですので、信頼性は高いのではないかと思います。ですので、みなさんも安心してわらびを楽しんで下さい。
「秋茄子は嫁には食わすな」という話がありますが、こんな諺もあります。
「五月わらび嫁に食わすな」
それほどに美味しいという意味なんですが、やはり昔の封建的な男尊女卑の社会においてできた諺なんだと思います。現代の感覚からしたら、そんな美味しいものなら食べさせて上げなさいよって感じですよね(笑。
ということで、わらびの危険性に関しての心配が解消されたら、わらびを使ったお料理でわらびをたっぷりと満喫しましょう!
次のページは「わらびを使ったレシピ一覧」となっていますよ♪Σ(ノ≧ڡ≦)
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